カタツムリやデンデンムシという言い方は日常語であって、生物学的な呼び方ではなく「~マイマイ」などが正式な呼び方であり、
「でんでん」は「出ろ、出ろ」と子供がカタツムリを指して呼ぶ言葉が訛ったものではないかと推測される。
日本では、カタツムリを信仰対象とするものも多く、東京都府中市の大國魂神社では、境内にある大イチョウの根元に生息するキセルガイを煎じて飲めば母乳の出がよくなるという信仰があったという。イチョウは大木になると気根が垂れるため母乳信仰が生じたとも言われるが、そこにキセルガイが生息していたことで貝と母乳が関連付けられたのかも知れない。
埼玉県秩父地方には子供の耳ダレに験があるとされる「だいろ神」というカタツムリ神があり、祠にはカタツムリの殻を奉納したと言われる(「だいろ」とはカタツムリのことで、地方によってはナメクジを指すこともある)。珍しい信仰で、カタツムリの粘液や蝸牛骨からの発想である可能性が高いが、詳しい由来は不明である。
直接民間療法とは関係しない例としては、九州地方やその周辺部のキセルガイ信仰があり。これは神社の大木の樹幹などに生息するシーボルトコギセルやギュリキギセルなどを信仰対象としている。これらの貝は乾燥や飢餓に比較的強く、殻内に入ったまま長期間(数ヶ月以上)生存するため、旅や出征に赴く際に神社の樹から採ってお守りとして持ち歩き、無事帰還したときに再び神社の木に戻すことなどが行われた。同様の信仰のある山口県下関市の一の宮住吉神社では、シーボルトコギセルを象ったお守りも販売されている。さらに熊本県などではキセルガイを「夜泣き貝」といって、子供の夜泣きにも効くとされ、夜泣きする子の枕下に貝を入れ、治ればもとの樹に戻すという信仰があったという。
因みにカタツムリは低温や飢餓に強く、マイナス120度まで下げても死ななかったという実験結果があり。飢餓状態では三年間寝ることが出来る。
「角出せ、槍出せ、頭出せ」の槍とはカタツムリの生殖器のことで、白い槍状の形をしていて、恋矢(れんし)という素敵な名前が付いている。
作品<帰路>では、カタツムリの通った後の粘液を銀ロウで表現し、地図の上を家まで足跡を残しながら帰る様を表現、因みにこの粘液はビンガム流体といって、接着性と流動性を併せ持つ特殊な粘液で油の上でも刀の上でも自由に歩くことができる。